2009/07/15

第1回口頭弁論

医薬品ネット販売に関する行政訴訟の第1回口頭弁論が行われた。
http://www.nikkeibp.co.jp/it/article/NEWS/20090714/333812/

法廷に出るのは初めてだったので緊張したが、淡々と事務的に進んでいった。今回は、30分間の冒頭陳述の機会をいただいたので、こちらの主張を述べることができたが、それがなければものの10分ほどで終わってしまうような感じだった。短い時間だったが、裁判長の口から何度か「これは重大な憲法事件ですから」という言葉が出たのは予想外のことだった。数多くの訴訟を手がけている中で、今回の訴訟の意味合いを理解していただいていると受けとめた。
僕は冒頭陳述で下記のように述べた。最後に述べているように、行政の暴走を法の番人である司法に食い止めていただき、日本国憲法の精神が守られ、消費者の利益のためにも、より安全で便利な医薬品ネット販売が継続できることを心より願っている。

----------------以下、冒頭陳述----------------
改正薬事法が施行された6月1日以降、医薬品ネット販売禁止という不条理な省令により、当社の経営に甚大な被害が出ています。一刻も早く、この省令の憲法違反を判決で明らかにしていただき、改正薬事法施行前のように安全な医薬品ネット販売を再び続けさせてください。
1.医薬品ネット販売の実態
当社は薬事法に基づき、店舗所在地の知事より販売許可をいただき、薬剤師が医薬品を管理し、販売している店舗です。インターネット上でも従来から、安全な医薬品販売を行ってきました。
ネット販売にこだわっていますのは、昨今のドラッグストアに見られる医薬品の販売の仕方がとうてい安全とは言えないと感じているからです。医薬品を棚に陳列するだけで、お客さまにセルフで取りに行かせ、パッケージを見るだけで買い物かごに入れ、アルバイトの店員がレジを打ち、代金をいただいて、袋につめて お渡しする。こんな売り方が「対面」であるというだけで、十分な情報提供をしたことになるでしょうか?
むしろ我々が行うネット販売のほうがはるかに丁寧です。ウェブページ上では医薬品のパッケージに書かれている説明だけでなく、説明書に書かれている詳しい説明も読むことができます。薬を買おうとすると、必ず資料にありますような問診表がでてきて、そのお薬を買ってはいけないアレルギーがあるか、年齢制限に引っかからないかなどをチェックしなければ買えません。お薬に関してわからないことがあれば、電話やメールで問い合わせられます。必ず、薬剤師が懇切丁寧にお答えします。
お客さまはこのような医薬品ネット販売に安心して買い物にいらっしゃいます。特に、最近の新型インフルエンザ拡大の際には、医薬品ネット販売があるおかげで、感染の可能性が高い人混みに出向かずにすんだ、といったお声も多数いただいています。
よく、安全か利便かと言われますが、間違った問題の把握です。ネットは安全を確保した上で利便性を提供しています。
しかしながら、このたびの省令では、6月1日以降、ビタミン剤とか整腸薬のような一部のお薬を除いて、風邪薬とか、水虫の薬、胃腸薬、漢方薬、妊娠 検査薬といった医薬品のネット販売を危険であるとして一律に禁止されました。薬事法に明記されていない「対面の原則」に基づいて、省令で禁止するというのです。そもそも、なぜ対面でなければ安全性を担保できないのか根拠は示されていません。また、ネット販売だから発生してしまった重大な副作用も1件も報告されていません。
2.省令の問題点
今回の改悪省令の最大の問題は、国会で定められた改正薬事法を、厚生労働省が行政の権限を逸脱して解釈し、医薬品ネット販売事業者が営業するすべを不当に絶ってしまったことです。
医薬品は人の健康を守ってくれる反面、副作用のリスクがあります。その副作用リスクを低減するために、改正薬事法では第36条の6で「医薬品の販売の際に専門家が、その適正な使用のために必要な情報を提供」することを求めています。従来、当社はお客さまの副作用リスクを低減するための情報提供を、前に述べましたように徹底的に追求してきました。
しかしながら今回省令を策定するにあたって、厚生労働省は「対面でない説明は情報提供として認められない」という「対面の原則」を打ち出しました。ドラッグストアでバイトが単にレジを打つだけで、ほとんど会話も交わさない、店頭の販売現場と、お客さまがホームページ上の副作用情報をじっくり見た上で、メールや電話で薬剤師と相談しながら医薬品を購入するネット販売のどちらが副作用リスクの情報提供をしっかりと行えるでしょうか?厚生労働省は「ドラッグストアは店頭での対面なので情報提供できるが、ネットは情報提供にはならない」という前提で、今回の省令を作りました。

裁判官の方にお願いがあります。一度、ケンコーコムのサイトで医薬品を購入しようとすると、どのような情報提供がなされるか、試してみてください。そして、同じ医薬品を薬局やドラッグストアで購入しようとしてみてください。どちらの方法が副作用リスクを低減する、より安全な方法かが明らかになるはずです。

3.改悪省令施行を阻止するための活動
今回の理不尽な省令が公布、施行されるのを食い止めるために、我々は取りうる手段を尽くしました。2005年より厚生労働省に働きかけを行い、ネッ ト販売の安全策も示してきました。この省令づくりの検討会へ参加させてもらえるよう求めましたが、門前払いされました。省令が公布された後に、舛添大臣の肝いりで始まった「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」においてはようやく委員としての参加が認められ、省令の再改正に向けて、忌憚なく意見を述べさせていただきました。しかし、ネット販売に以前から反対してきた委員が大半を占めるいびつな構成の検討会での議論は平行線に終わり、報告書すら出せない状況で、5月22日に第7回をもって終了しました。
一方で、検討会に承認されず、パブリックコメントでも賛成が9,824件中42件の0.5%にとどまる経過措置の省令が5月29日に公布・施行されました。この省令は「2年間の経過措置で、離島居住者および継続購入者に限って2類の販売を認める」という、とても承服しがたいものでした。このような経過措置では、当社が改悪省令により被る甚大な被害はほとんど救済されません。継続が確認できないお客さまには断腸の思いで販売をお断りせざるを得ません。6月は前月と較べて医薬品売上が62%も減少しました。1ヶ月間で2,300人のお客さまに販売のお断りをしました。しかも、お客さまが医薬品を購入されるたびに、その購入が継続購入であるかどうかを確認しなければなりません。お客様の安全な医薬品購入には何ら貢献とならず、コストだけがかさむ業務は実にむなしいものです。
4.改正薬事法施行後の実態
このように、医薬品ネット販売という業態をまさに殺そうとしている改正省令ですが、この改悪によって情報提供がしっかり行われるようになったのでしょうか?店舗の現場、あるいは通信販売を見ても決してそうは言えません。
改正薬事法施行後の7月に、第二類医薬品を買うためにドラッグストアに行きました。薬剤師でも、登録販売者でもない、単なるアルバイトの店員が、レジで販売してくれました。その際に店員からかけられた言葉は「ポイントカードをお持ちですか?」ということだけでした。別チェーンのドラッグストアに行ってみましたが、そちらでも同様です。このような対面販売を守るために、まじめなネット販売が禁止されたのは、本当にやるせないです。
また、改正薬事法施行後も、伝統薬のメーカーは新聞広告で新規顧客に対して相変わらず第二類医薬品の販売行為を行っています。これは僻地で薬剤師がいないところでも医薬品が供給されるように作られた特例販売業という許可を、施行直前に駆け込みで取得したことにより可能になりました。特例販売業であれば、通信販売は禁止されていないのです。伝統薬のメーカーも生き残りに必死なので同情するところはありますが、まことにおかしな話です。登録販売者すらいない特例販売業は通信販売ができて、薬剤師がいる薬局や店舗では通信販売が禁止されます。厚生労働省はネット販売だけを目の敵にしているようです。
実態として店舗が情報提供を行わなくても厚生労働省は看過し、伝統薬メーカーの脱法行為まで容認しています。一方でネット事業者は不本意ではありますが、外観上存在している以上、やむを得ず法令を遵守した販売をしています。その結果、ケンコーコムは年間5億円もの売上を失います。「正直者が馬鹿を見る」というのはまさにこのことです。
5.司法へのお願い
今回の改悪省令は、ドラッグストアや薬剤師を守るために、厚生労働省が露骨なネット潰しをたくらんだ全くアンフェアな省令です。
行政の暴走を、法の番人である司法に食い止めていただき、日本国憲法の精神が守られ、消費者の利益のためにも、より安全で便利な医薬品ネット販売が継続できることを心より願います。