2007/02/06

ポイント制あれこれ

amazonが今月からポイント制を導入した。ポイント制はサービス業や小売にとって麻薬のようなものだと言われるが、彼らが導入することのメリット・デメリットはどうなのだろうか?僕も明快な答えを持っていないが、いつも気に留めていることをいくつか書きつづってみる。

1.航空会社のマイレージと小売のポイント制
航空会社のマイレージは確かに非常に魅力的なサービスだ。航空会社と利用者でWin-Winの関係が成り立っている。利用者からすると無料または格安で旅行できるのはうれしい。一方で航空会社からすると、マイレージの無料航空券の原価はほとんど無料。無料航空券を発行しようがしまいが、航空会社は飛行機を飛ばしている。空席があれば、そこに無料で人を乗せても原価はほとんどかからない。
小売の場合はそうはいかない。小売は物を仕入れて販売しているので、仕入部分はまるまる原価となる。例えば、原価率80%の小売であれば、100円分のポイントが利用されると80円分の原価が発生してしまう。

2.家電量販店やデパートのポイント制
供給者サイドからの価格支配力が強い場合にポイント制が活用されているらしい。商品のブランドイメージを崩さないために、名目上の販売価格は業界内で一定水準に保たれていても、実際の値引きをさらに拡大するためにポイントを活用しているようなケースがいくつかの業界では見られるらしい。例えば、家電量販店で10%ポイント還元とかやっているのは、こういう事情もあるらしい。

3.利用者から見たお得感
購入単価が低い業態の場合、利用者にお得感を伝えるのが難しい。
例えば、1回の購買単価が3千円の小売で、ポイント付与率が1%の場合、1回の購入に対しては30円分の金銭的価値のポイントを付与することになる。一方、飛行機で欧米へ1往復すると数千?1万マイル程度のマイレージがたまる。利用者から見ると数千円から数万円の金銭的価値に見える。10万円の家電を買って10%のポイントが付くと、利用者から見ると1万円程度の金銭的価値に見える。

4.ポイントのハンドリングコスト
ポイントのハンドリングにかかるコストは馬鹿にならないと思う。返品等が発生すると、それに対する取り消し処理が発生する。また、ポイント付与タイミングや失効に対する問い合わせのような業務も少なからずある。これらのハンドリングコストは付与の金額ではなく、付与の回数にある程度比例すると思われる。一度に付与するポイントの金銭的価値が大きければ、付与側から見たハンドリングコストのインパクトはさほど無いが、ポイントの金銭的価値が小さければ付与側の労の割に利用者がメリットをさほど感じないようなことになりかねない。

5.モールのポイント制
ここまで、購買単価が低い小売におけるポイント制導入に関して、いくつか難しい店があることを書いたが、Eコマースでは購買単価が低い割にポイントが結構普及している。また、楽天をはじめとするモールでは、ポイント制の導入が一つの大きな成功要因になっているように見える。どうしてこれがうまくいくか?ポイントの原資をモール運営者ではなく、テナントが負担しているためだ。しかも、返品等の面倒なハンドリングもテナントが行っている。利用者から見ると、ポイントによる値引きはありがたいので、流通量も増える。モール運営者と利用者はうれしい限りだが、テナントから見るとメリット・デメリット双方が存在する構造になっている。

今回のamazonのポイント制導入のアナウンスが大々的に行われたわけではないのは、こういった状況を考慮したのかなと勝手に想像している。購買単価が低い小売においては、上で挙げたハンドリングコストも馬鹿にならないので、ポイント分も織り込んだ価格設定をすればいいんじゃないかなと、理屈の上では思う。ただ、Eコマースの世界ではモールがポイント制を普及させながら成長してしまったので、単に合理性の問題だけではすまなくなってしまった。amazonジャパンが購買単価の低い小売としてポイント制をどう活用していくか、日本、いや世界のEコマースを変えるかもしれない大きな実験が始まった。