オートクチュールの夢
1980年頃くらいまで
私の母の着るお出かけ服はすべて仕立て服だった。
私は幼稚園児の頃から仮縫いについて行くのがとても好きだった。
母の仮縫いの間じゅうずっと外国のファッション雑誌を眺めていられる
からだった。
泳ぐような曲線と直線の狭間から美しい女性の顔が、手が、足が
キャンパスに描く美しい模様のように見えた。
どこかの海辺や どこかのお城や 見たこともない美味しそうな食べ物が
そこにはたくさん映っていて ただ眺めているだけでうっとり。としていた。
生地を選んだりする日も楽しかった。
その頃の神戸は三宮の高架下街は軒並みに生地屋が溢れていた。
聞こえてくる日本語はたどたどしく、港町神戸にふさわしく
あらゆる人種が生地屋を開いていたからだ。
母が選ぶ布はどれも華やかなものだった。
シルクやジョーゼット、サテンに、ベルベッド、花柄やレースたち
目の覚めるような深紅にうすいピンク イエロー、淡いクリーム、
紺、白、ブラック etc etc
繊細でモダンでシックでロマンティックな女性達のような
生地たちが所狭しと並んでいた。
母は自分の好みと似合うスタイルを良く知っており決断が早かった。
厚い紙の板に巻かれた布たちが大きく呼吸するように広げられた様は
見ていてため息が出た。
あこがれ。。
肩が細く、流れるようなドレープを効かせたワンピース
美しいカッティングとかわいらしいボタンがついた総レースのスーツたち。
平べったかった布があれよあれよといい匂いがする魔術師によって
裁断され立体に変化して行くそのプロセスには
毎度毎度心がワクワクして、躍るようだった。
先日、近所の病院でふと手にした女性誌に
80歳でいまだ現役のオートクチュールデザイナーの方が載っていた。
その方のプロフィールを読むにつれ、私のなかに一人の女性が浮かんできた。
子供の学校の父兄の方だった。
いつだったか、彼女のお母様が、昔デザイナーだったことを聞いたことがあった。
トルソーに巻き付いた布地に手を当て、笑顔で写っているそのお顔は
どことなく彼女に似ている気がした。
あ。。
コレは、絶対彼女のお母様だわ!!!
そう直感した私は直ぐに携帯を取り出し、彼女のメールアドレスを探す。
『元気?
ご無沙汰しています!
今、ふと手にした雑誌で
とても素敵な方が載っていらして私なんだかわからないけれど
○○さん(彼女のこと)のママ?って思っちゃったの
勘違いだったらごめんなさいね。
ファッションデザイナーの方でした。』
とメールを送った。
すると、
『あっちゃん? その通り。お恥ずかしながら私の母です。』
と返事が来た。
次に
『この年で雑誌に載せて貰えて嬉しいと本人は喜んでいるの』
と書いてあった。
彼女は会うたびいつも素敵なのを身につけていて
私が聞くといつも決まってこう答えた。
『母が縫ってくれたものよ。。』
ああ、なんて素敵なのだろう
嬉しい ”something” に出会えた気がした。
私の母の着るお出かけ服はすべて仕立て服だった。
私は幼稚園児の頃から仮縫いについて行くのがとても好きだった。
母の仮縫いの間じゅうずっと外国のファッション雑誌を眺めていられる
からだった。
泳ぐような曲線と直線の狭間から美しい女性の顔が、手が、足が
キャンパスに描く美しい模様のように見えた。
どこかの海辺や どこかのお城や 見たこともない美味しそうな食べ物が
そこにはたくさん映っていて ただ眺めているだけでうっとり。としていた。
生地を選んだりする日も楽しかった。
その頃の神戸は三宮の高架下街は軒並みに生地屋が溢れていた。
聞こえてくる日本語はたどたどしく、港町神戸にふさわしく
あらゆる人種が生地屋を開いていたからだ。
母が選ぶ布はどれも華やかなものだった。
シルクやジョーゼット、サテンに、ベルベッド、花柄やレースたち
目の覚めるような深紅にうすいピンク イエロー、淡いクリーム、
紺、白、ブラック etc etc
繊細でモダンでシックでロマンティックな女性達のような
生地たちが所狭しと並んでいた。
母は自分の好みと似合うスタイルを良く知っており決断が早かった。
厚い紙の板に巻かれた布たちが大きく呼吸するように広げられた様は
見ていてため息が出た。
あこがれ。。
肩が細く、流れるようなドレープを効かせたワンピース
美しいカッティングとかわいらしいボタンがついた総レースのスーツたち。
平べったかった布があれよあれよといい匂いがする魔術師によって
裁断され立体に変化して行くそのプロセスには
毎度毎度心がワクワクして、躍るようだった。
先日、近所の病院でふと手にした女性誌に
80歳でいまだ現役のオートクチュールデザイナーの方が載っていた。
その方のプロフィールを読むにつれ、私のなかに一人の女性が浮かんできた。
子供の学校の父兄の方だった。
いつだったか、彼女のお母様が、昔デザイナーだったことを聞いたことがあった。
トルソーに巻き付いた布地に手を当て、笑顔で写っているそのお顔は
どことなく彼女に似ている気がした。
あ。。
コレは、絶対彼女のお母様だわ!!!
そう直感した私は直ぐに携帯を取り出し、彼女のメールアドレスを探す。
『元気?
ご無沙汰しています!
今、ふと手にした雑誌で
とても素敵な方が載っていらして私なんだかわからないけれど
○○さん(彼女のこと)のママ?って思っちゃったの
勘違いだったらごめんなさいね。
ファッションデザイナーの方でした。』
とメールを送った。
すると、
『あっちゃん? その通り。お恥ずかしながら私の母です。』
と返事が来た。
次に
『この年で雑誌に載せて貰えて嬉しいと本人は喜んでいるの』
と書いてあった。
彼女は会うたびいつも素敵なのを身につけていて
私が聞くといつも決まってこう答えた。
『母が縫ってくれたものよ。。』
ああ、なんて素敵なのだろう
嬉しい ”something” に出会えた気がした。



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